水上勉 《土を喰う日々―わが精進十二ヶ月》
出版された当時、タイミングを逸して読まないままになっていたのですが、
町の小さな書店でたまたま文庫を見つけて、やっと購入しました。
一読。
著者がタイトルに―土を喰う―とした意図がよくわかります。
土に育まれた植物の、一枚の葉も茎も根も無駄にはしない。
―喰う―のです。
人が自らの命をつなぐために他の命を奪うなら、
気迫を持って立ち向かい、すべてを味わい尽くすのが礼儀だと、
著者はむきつけには言いませんが、ほとばしるように一行一行から伝わります。
……という極く真面目な感想はさておき、それぞれの料理が、
素晴らしく美味しそう!!
そして「参りました」というほど手間がかりそう!!
胡麻豆腐など、こんなに手がかかるのかと驚嘆しますが、
これを作って食べたら、さぞかし《命を頂く》実感があるだろうと思います。
精進料理ですが”豊潤”という言葉がふさわしい。
日々寒さも厳しくなってきましたが、読むだけで食欲を刺激されます!